たまちゃん「先ぱ〜い、そろそろラーメンの取材に行かないとまた編集長に怒られますよ。この間のワイン・テイスティングの時も酔っ払って変なコメント書いてたのは実は先輩だったんじゃないかと疑ってましたよ。」
先輩「お〜、たまちゃん。そうそう、今回はラーメンの取材だね。じゃあそろそろ行こっか。」
たまちゃん「でも先輩。いいんですか?ラーメンの取材なんか請け負っちゃって。だいたいシカゴで美味しいラーメンの店なんて聞いたことないですよ。色々食べて結局『美味しい所はありませんでした』じゃ編集長切れちゃいますよ。私ちょっと心配なんですけど。。。また先輩怒られちゃうんじゃないかと思って。」
先輩「なんだ、信用無いな〜。大丈夫、大丈夫。俺に付いて来れば大丈夫マイフレンド。」
たまちゃん「????何ですか、それ?」
先輩「あ、知らない?村上龍なんだけ。。。ま、いいや。じゃあ張り切っていくぞ〜。今日は水曜日だろ、よし、最初はマンプロの桜だ。」
たまちゃん「桜ってあの本店の方の桜ですか?あそこにラーメンなんてありましたっけ?」
先輩「お、知らないの?桜のラーメンは結構有名だぞ。水曜と金曜のランチだけという特別メニューなんだ。どっちも一日50食ぐらいしか出さないんだけど、ファンがいるから12時半(開店は11時半)には売り切れちゃう事もあるんだ。」
たまちゃん「へ〜、そうなんですか〜。あ、もう12時じゃないですか。急がなきゃ!」
<マンプロの桜に到着>
たまちゃん「わたし、桜ってあんまり来た事ないんですよ〜。何か敷居が高そうで。」
先輩「そう?まだそういうイメージがあるのかな。でもランチや週末のスペシャル・メニューなんかも結構リーズナブルだよ。それにここの日本間だって別料金を取られるわけなじゃいんだから、接待ばかりじゃなく合コンにだって使えるんだよ。」
たまちゃん「へ〜、そうなんですか。(お店に入って)うわ〜、本当だ。みんなラーメン食べてる〜。」
先輩「そう、これが水曜日のスペシャルメニューのタンメンだよ。じゃ、早速オーダーしよう。」
(タンメン到着)
たまちゃん「うわ〜、大きい!色んなものが入ってますよ、これ。え〜っとイカ、タケノコ、白菜、しいたけ、かまぼこ、ニンジン、もやし。。。」
先輩「タツタ揚げやチャーシュー、スノーピーポッドも入ってるだろ。勿論たまごもね。ほら、もたもたしてないで、のびる前に食べなくっちゃ。」
たまちゃん「このスープちょっと辛くっておいし〜。」
先輩「これがオーナーの大槻さん自慢のトンコツベースのピリ辛スープだ。クサミが無くってスッキリした喉ごしだろ。この店は基本的に『固めショッパ麺』なんだそうだ。」
たまちゃん「でも具が多すぎて、(奮闘中)麺までたどり着けない。。。」
先輩「ははは、そうだね。それが欠点だな(笑)。具がタップリだから麺に到達するまでにお腹が一杯になっちゃう人もいるくらいだよ。最初に底の方から麺を引きずりだすか、別に器をもらった方がいいかもね。」
たまちゃん「(スープをズズズッズ)プワ〜。トンコツって他のお店だと薄くって後味の悪い所が多いですけど、ここのは本当コクがあるのにスッキリしてる。」
先輩「そうだね。でね、金曜日には大きなチャーシューが3枚も入ったチャーシュー麺もやってるんだ。そっちは牛の脂肪から出る脂を使ってかつおぶしやだしこぶでつくったスープなんだが、こってりしたしょうゆ味が何とも言えず美味しいんだ。ローストしたニンニクとユズが隠し味なんだよ。それも今度食べに来ような。」
たまちゃん「はいっ!」
たまちゃん「ところで先輩なんでマンプロだけマンプロって言うんですか?だって、アリハイとかバファグロとか言わないのに何でマンプロだけ。。。」
先輩「妙な所に拘るね〜。でもそうだよな〜。ロリメドとかエルグロとかは響き悪いからだと思うけどね。そう言えばこの間外人に『アイ・リブ・イン・マンプロ』って言ってる人がいたぞ。相手も理解してるみたいだったのが怖いけど。。。」
たまちゃん「(スープをズズズッズ)プファ〜。」
先輩「質問だけしといて人の話聞いてね〜よ。。。」
<翌日>
先輩「たまちゃん、今日はね『勝』に行くぞ!」
たまちゃん「『勝』?ですか。」
先輩「あれ、知らないの?そっか、ミツワの周辺にいるとあんまり行く機会ないかもな。カリフォルニア通りにコリアンのカラオケがあるだろ?ほら、ピーターソンとの角のさ。『勝』はあそこの近くにある日本料理屋さんなんだけど、今日はそこの「カニラーメン」を食べに行くんだ。」
たまちゃん「カニ・ラーメン?そんなラーメン聞いた事ないですよ。」
先輩「だろ、あれはシーズンによっては無い事もあるんだけど、冬の間は大抵ある。でも一応電話しておくか。(受話器を置く)よし、あるって。」
たまちゃん「行きましょ〜。♪カニ食べ行こう〜♪って歌ありましたよね。」
先輩「バフィーだっけ?」
たまちゃん「『パ』ですよ、パフィー!バフィーじゃゴルフクラブじゃないですかっ!」
先輩「あ、そっか。まあいいじゃん。ほれ、♪カニ食べ行こう〜♪」
<勝到着>
たまちゃん「うわ〜、入り口はウカウカしていると見過ごしちゃうほど質素ですけど、中は綺麗なところですね〜。」
先輩「ここはね、昔は「居酒屋勝」って言ってダウンタウンで働いてた人達が郊外に帰る時に立ち寄ってた庶民的なお店だったんだ。僕も最初は領事館の女の子に教えてもらったんだ。」
たまちゃん「えっ?(動揺を隠せず)」
先輩「(えっ?の意味を勘違いして)そうだろ、それがこんなに綺麗になっちゃったんだ。5年くらい前にリモデルしたんだそうだ。この店はラーメン以外の物も美味いぞ。オーナーのカツさんはいつも旬の食材に気を配りながらちょっと他の店には無いような料理を出してくれるんだ。こないだ来た時に食べたマツタケの土瓶蒸し(9月〜10月限定)やソフトシェルの湯葉巻きもオススメだ。それにこの店の鴨料理、特に合鴨の西京焼きは本当にイケるゾ。たまちゃんも今度彼氏に連れてきてもらいな。」
たまちゃん「(ふくれて)いませんよ、そんなモン。それよりラーメン!」
先輩「あ、そうそうラーメンだったね。ここにはラーメンが実に7種類もあるんだけど、どれもカツさんがガラと野菜からちゃんとダシを取ってるんだ。今日はカニラーメンとトンカツの入った勝ラーメンにしよう。」
(カニラーメンと勝ラーメン到着)
たまちゃん「ズズズズゥズズゥ、オッ!オイシ〜。あっさりしているのに凄いコクがある。このスープはどうなってるんですか?」
先輩「僕にも食べさせてよ。ズズズズ、ぷは〜、やっぱ美味しいね〜。これはねカツさんのオリジナルなんだけど、辛し味噌に小さなワタリガニを漬け込んでそこからスープを取ってるんだ。カニの味が繊細でいいよね。味噌味の染みこんだカニの旨みがちょっとしたあまみを出してまろやかだろ。」
たまちゃん「本当、辛し味噌のカニ鍋に麺が入っているみたい。入ってる具はニラともやしとシンプルだけど、それがかえってカニの味を引き立てますね、このカニがまた。。。ジュルジュル。」
先輩「お〜、ねぶってるね〜。いいね〜、カニってさ食べ方でその人の性格出るよね。俺好きだな〜バリバリ、ジュルジュルとカニ食べるコ。ハハハハ。」
たまちゃん「だって美味しいんですもん。気取ってちゃ損ですよ。」
先輩「そりゃそうだ。たまちゃんがカニばっか食べてるから僕はこっちの勝ラーメンを頂くね。こっちも東京育ちのカツさん自慢のラーメンだ。醤油ベースのラーメンの上にサクサクしたジューシーなトンカツがのってるんだ。う〜ん、やっぱダシから取ってると違うね〜。スッキリした喉ごしだ。」
たまちゃん「そっちも美味しそうですね。エイッ!(と言って一番大きなカツを奪い取る)あ、本当サクサクしてる〜。なんかここのラーメンはどれも豪華ですね。それにしてもこのカニラーメン、寒いシカゴの冬には最高です!」
先輩「お、うまくまとめたね。確かに寒いシカゴだからこそって感じもするよね。」
<翌週>
先輩「今日はダウンタウンまで行くよ。なんと昼と夜、両方ともラーメンだ。」
たまちゃん「(目を輝かせて)何処にいくんですか?」
先輩「まずお昼はEASTレストランと言ってこの間まで香々呂レストランだった所、それから帰りは内緒の大穴場だ。」
たまちゃん「ココロって名前が変わったんですか?そういえばココロ・ラーメンってありましたよね。」
先輩「うん、でもね、EASTに名前が変わった時にオーナーの仁木さんが思い切ってメニューに手を加えたんだ。その時ココロラーメンは無くなっちゃったんだけど、その代わりに加わった新しい味噌ラーメンが泣きが入るほど美味いらしい。」
たまちゃん「それじゃあ早速レッツラゴーですね」
<EAST RESTAURANT到着 (現在再びCOCOROレストラン)>
たまちゃん「このお店は窓も大きいし、音楽も厳選されてるし、いつ来ても雰囲気イイですよね。」
先輩「そうだね。ここはね、シェフが全員日本人なんだ。しかもただの日本人じゃなくって、みんな札幌で10年以上の修行を受けた人たちばかりを仁木さんが引き抜いてきたんだそうだ。最近は変な日本料理屋も多いだろ。仁木さんはシカゴの顔として誰に出しても恥ずかしくない日本料理を出す事に拘ってるみたいだね。ラーメンもね、鶏がらをベースに生姜に玉ねぎ、そしてニンニクでジックリとダシから立ててるんだ。醤油($7)、塩($7)、味噌($7.25)、味噌野菜($7.5)、トンコツ($8.25)と5種類あるけど今日はやっぱり味噌でいくことにしよう。おっと、ここでワンポイント・アドバイス。ここで味噌ラーメンを食べる時は生のニンニクを入れてもらうのを忘れずに!味噌の風味が一層引き立つぞ!」
たまちゃん「う〜ん、楽しみ!」
<味噌ラーメン登場>
たまちゃん「おおぉ、この焼き豚の厚さは!ズルズルズル、このスープ、コクが違うッ!」
先輩「ジュズズズズぅ、プハ〜。やっぱりラーメンも朝イチの方がダシが澄んでて美味いよな〜。これだよ、これ。ちょっと七味を入れてッと。」
たまちゃん「いやあ、味噌味ってゴマカシてる店だと後味が悪いんですよ。薄くって怒鳴りつけちゃおうかと思うところも少なくないですよね。それなのに、ここの人達はちゃんと基本に忠実に一生懸命作ってくれてますよ。(ちょっとしんみり)なんかお客として大切にされてるって気がする。。。」
先輩「うん、確かにサービスも大切だけど、本当にお客を大切にするって事はこういう事なんだよな。だからこそ、1日40食ぐらいしか出せないこのラーメンは直ぐ売り切れちゃうらしいよ。」
たまちゃん「先輩、先輩、さっきからあの隣の人が食べてる山菜のいっぱい入った鍋焼きうどんが気になってしょうがないんですけど、あれも食べてイイですか?」
先輩「げ、まだ食べるの?いいけどここの鍋焼きを頼む時はイナリ寿司(メニューにはのっていない)を一緒に食べるといいぞ。あと、醤油ラーメンには手作りギョウザだ。」
たまちゃん「あ、でも次、謎のお店に行くんでしたね。う〜ん残念だけど山菜は我慢するか。で、その謎のお店ってのはどこなんですか?」
先輩「うん、じゃあ腹ごなしにミシガンアベニューをグルリとしてから行くとするか。」
<約4時間後>
たまちゃん「ここはローレンス通りじゃないですか。また勝にでもいくんですか?」
先輩「まあまあ、黙ってついといで。」
たまちゃん「あれ、ここはシカゴ・カルビ?シカカルにラーメンなんて無いですよ。それとももしかして。。。それって幻の『裏メニュー』って奴なんですか?」
先輩「おっ、よく知ってんじゃん。まさにその通り。焼肉屋さんとしてはシカゴで知らない人はいないというほど有名なシカゴ・カルビには毎日足を運ぶ常連さんも少なくないんだ。でもどんなに美味しい焼肉でも毎日食べてるとちょっとキツくなってくる。そこでオーナーシェフの戸塚さんがそんな常連の人達の為に考案したのが『裏メニュー』なんだ。今日食べに来た『あんかけラーメン』もその一つなんだよ。」
たまちゃん「あんかけラーメン?ですか?」
先輩「うん。カルビ肉のスジや骨を使ってダシをとってあるコッテリスープなんだけどとにかく五目野菜や海鮮類に肉類がいっぱい入ったもの凄いボリュームのラーメンなんだ。とにかく麺がある時しか作れないので、事前に作れるかどうか電話を入れてから行った方がいいね。」
<あんかけラーメン到着>
たまちゃん「うわ〜、本当にあんかけだ〜。麺が見えないぃ!う〜んこのスープは確かにコクがある。さすが高級カルビ肉でダシを取ってるだけの事はありますね。それにしてもあんかけラーメンなんて私初めてですよ。う〜ん、このマッタリしたスープはクセになりそ〜。それに入ってるものがとっても豪華。う、こ、この麺は?!かたさがアルデンテぇ〜、美味しすぎる!」
先輩「本当だ!ここの麺は手打ちみたいなコシの強さだね。まさか焼肉屋さんなんだから手打ちなわけはないだろうけど、お客さんの為にしっかり研究して気を配っている証拠だね。う〜ん唐辛子の入ったこのピリ辛スープも喉ごしがいいね〜。」
たまちゃん「ちょっとしょっぱめなのでご飯がススみますね〜。いやあさすがは『裏メニュー』だけの事はある。それにしても凄いボリューム!」
先輩「うん、でもさ、さっき店員さんに聞いたんだけど常連さん達は焼肉を食べた後のシメにこれを食べていくらしいよ(笑)。」
たまちゃん「し、信じられない!それにしてもこの麺、結局最後まで延びませんでしたよ。最後までアルデンテ!」
先輩「うん、もともと戸塚さんはフレンチで修行を受けた人なんだけど彼の料理への拘りはその頃から人並みはずれているそうだ。この麺にしても、これに落ち着くまでにはかなり研究を重ねたんだって。そのコダワリがここの焼肉の質にも繋がっているんだね。」
<編集部に戻って>
たまちゃん「いやあ、今回は本当に勉強になりました。シカゴのラーメンなんて!ってずっと思ってましたけど、探してみればある所にはあるんですね。」
先輩「うん。今回は紹介できなかったけど、読者からはダウンタウンの志乃や、アーリントンハイツのペニーレーンのラーメンにも票が入っていたよ。期待したいね。」
たまちゃん「はいっ!」
<レストラン紹介>
桜レストラン(マウントプロスペクト店)
お馴染みシカゴの老舗「桜」の水曜日と金曜日はランチに特別ラーメンが。高級店のイメージもあるが、ラーメン以外のランチ・メニューや週末メニューはとってもリーズナブル。オーナーが変わってからは子連れでも気軽にいける店になっている。
住所:105 S. Main St., Mt. Prospect, IL 60056
電話番号:(847)577-0444
勝レストラン
昔から外務省関係者などのご用達レストランとして知られている。お洒落な店内はとってもイイカンジ。とにかくこのお店の鴨料理は一食の価値あり。シカゴでは旬のものが食べられないなんて言っている人は是非お試しあれ。
2651 W. Peterson Rd. Chicago, IL 60659
電話番号:(773)784-3383
EAST JAPANESE RESTAURANT(旧香々呂)
長年シカゴの顔だった香々呂が全米にもネットワークのあるEASTレストランとして生まれ変わった。これまで以上に味と素材に気を使いながらも、なんとランチはボリュームを上げて値段を下げるというアグレッシブさ。日本で修行を受けたシェフによる豪華なケータリングも可能。
668 N. Wells St. Chicago, IL 60610
電話番号:(312)943-2220
シカゴ・カルビ
言わずと知れた炭焼き焼肉のシカカル。ラーメンも美味しいがお薦めは和州牛の『タン』和州牛とはワシントン州で育てられている神戸牛で、毎週8頭しか出さないという幻の代物。その8頭のタンのうち実に3本がこのシカゴカルビに空輸されて来る。後はニューヨークのあのノブとLAの焼肉屋さんだけ。イチロー選手の大好物としても有名。
住所:3752 W. Lawrence Chicago, IL 60625
電話番号:(773)604-8183
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