（掲載日：08/25/2025）

　湖と森の自然に囲まれた郊外の町、Waucondaで偶然見つけた、穴場のメキシカンレストラン「Raul's Burrito」をご紹介します。Waucondaはインディアンの言葉で「霊なる水（Spirit Water）」を意味するそうですが、レストランまでの道中は、その名にふさわしくキラキラと輝く湖面と、穏やかな田園風景が広がっており、心癒されます。「Raul's Burrito」は、温かみのあるカジュアルなインテリアが印象的で、取材時は地元の常連客や家族連れで賑わっていました。注文はカウンターで行い、番号が呼ばれたら自分で受け取るセミセルフサービス方式。スタッフは多くはありませんが、テキパキとした対応とフレンドリーな笑顔で、心地よい接客が心に残ります。

　同店の魅力は、なんといってもメキシコの屋台のように「一個単位で注文できるタコス」。気軽にさまざまな味を試せるのが嬉しいポイントです。この日は、チキン・ポーク・ステーキの3種類と、看板メニューのチラキレスを注文しました。チラキレスは、揚げたトルティーヤチップスに赤または緑のサルサをたっぷり絡めてしっとりと煮込んだメキシコの伝統料理で、上にはチーズやサワークリーム、玉ねぎ、アボカド、さらにチキンやステーキなどが豪快にのっています。同店のチラキレスは全体的にスパイシーですが、お好みでさらに辛いソースを追加することも可能。口から火が出そうになっても、なぜかまた食べたくなる、そんなクセになる一皿です。タコスはどれも個性的で、チキンとポークはマリネされた肉がカリッと香ばしく、トマトやレタス、チーズと一緒に頬張れば、口いっぱいに旨味が広がります。一方、ステーキのタコスは薄く平たい肉の食感と控えめな味付けが特徴的ですが、緑系のサルサ、シラントロ、グアカモレとの組み合わせでさっぱりとした苦味があり、特に暑い季節にぴったり。どのメニューもボリューム満点で価格も手頃なので、味・量・価格のバランスが優れており、コスパ重視派にも満足度の高いお店といえそうです。

　「Raul's Burrito」は創業者で元オーナーのRaulさんが亡くなった後、息子さんは店を継がず経営が危ぶまれましたが、30代前半の娘さんが父の味を守るために引き継ぎ、時代に合わせて店内をリモデルし、スタイルを刷新しました。スタッフの数は少ないながらも、効率的で丁寧なサービスとオーセンティックな料理からは、娘さんの情熱と誠実さが伝わってきます。そのため「Raul's Burrito」は、単なるレストランではなく、家族の想いと歴史が息づく心温まる特別な場所として、足を延ばしてでも訪れたいお店です。

シラントロやグリーンサルサのサッパリとした苦みがアクセントに効いたステーキタコス	カリッと香ばしいポークと瑞々しい野菜をたっぷりのせたポークタコス	看板メニューのチラキレスは揚げたトルティーヤチップスにサルサをたっぷり絡めて煮込んだもの