(掲載日：10/27/2025)

　シカゴの Humboldt Park（ハンボルト・パーク） は、湖や運動施設を備えた広大な公園を中心に、歴史ある建物と活気あふれる街並みが広がるエリアです。街を歩けば、プエルトリコ文化の影響を受けたアートやストリートアートがあちこちに見られ、クリエイティブなエネルギーに満ちています。そんな魅力あふれる街に店を構えるのが、今回ご紹介する和食レストラン 「Kaizan」。双子の兄弟、MelvinとCarlo Vizconde が2012年にオープンした同店は、当初はBYOBスタイルのカジュアルな寿司店としてスタートしましたが、現在では日本酒やクラフトカクテルなど多彩なドリンクとともに、美食コースが楽しめる高級レストランへと進化しています。ミシュランガイドの Bib Gourmand にも選ばれた実績があり、独創的で満足度の高い料理には定評があります。店内はこぢんまりとしながらも、和の繊細さとモダンなデザインが調和した上品な空間になっており、落ち着いた雰囲気の中に、洗練された美しさが漂います。カウンター席とブース席が並び、中央の寿司バーとオープンキッチンでは、シェフが一皿ずつ丁寧に仕上げる様子を間近で見ることができます。

　「Kaizan」では、おつまみから串もの、創作ロールなど、幅広いアラカルトメニューが揃っていますが、ぜひ試してほしいのは、その時々の旬の味を堪能できる おまかせコース。約10品前後の小皿料理や寿司、刺身を中心としたテイスティングスタイルで、季節の素材を巧みに取り入れながら、味の流れやバランスが綿密に計算された構成になっています。コースは90分制の着席制限が設けられており、テンポよく次の一皿が運ばれてくるため、全体を通して心地よいリズムで食事を楽しめるのも魅力のひとつ。また、アラカルトメニューを追加する場合も、サーバーがコースの進行に合わせて最適なタイミングで提供してくれるため、食事の流れを崩すことなく堪能できます。今回はおまかせコースに加えてたこ焼きを注文したのですが、絶妙なタイミングでサーブされました。上品に二つ盛り付けられたたこ焼きは、外はカリッと香ばしく、中はとろりとした食感で、まるで高級アペタイザーのような洗練された仕上がりに驚きました。

　コース料理はどれも手が込んでいて美味しかったのですが、中でも印象に残ったのは、サーモンの前菜、Shooter、ウニとネギトロのシソ手巻き、Flaming Scallop、にぎり寿司、そしてFish and Chipsでした。脂ののったサーモンの上にクリスピーな土台を合わせたサーモンの前菜は、ひと口ごとにサーモンのとろけるような食感と旨味が弾けるように広がります。Shooter（ウニ・牡蠣・ホタテ）は、ポン酢ソースとウズラの卵を合わせた小さなグラス仕立てで、名前の通り“ごくり”と飲むスタイル。鮮度の高さと旨味の余韻が心地よく、お酒との相性も抜群です。贅沢な食材のハーモニーを楽しめるウニとネギトロとシソの手巻きは、混ぜて海苔で巻いても、ひとつずつ味わっても絶品で、濃厚で深みのある味わいが楽しめました。火を使った華やかなプレゼンテーションが目を引くFlaming Scallopは、ホタテにシイタケ、スパイシーなマンゴーを組み合わせた大胆な一皿。甘みと旨味、香ばしさが絶妙に調和しています。極上の握り寿司はネタごとに最適な味付けが施されており、醤油をつけずとも完成された美味しさ。どの一貫にもシェフのセンスが光ります。そして最後に驚かされたのが、Fish and Chips。タラのフライにタロ芋チップスを合わせ、キュウリとセロリの爽やかさが効いたアイオリソースを添えた、見事な和洋折衷の一皿でした。

　店内はこぢんまりとしていますが、その分ライブ感があり、シェフやサーバーの動きを間近で感じられるのは魅力的。肩肘張らずに楽しめるカジュアルさを持ちながら、特別な日のディナーにもふさわしい落ち着いた雰囲気もあるので、「ちょっと和食が恋しい」と感じる時や、少し贅沢をして美食を堪能したい時に、ぜひ訪れてみてください。

 

ひと口ごとにサーモンのとろけるような食感と旨味が広がるサーモンの前菜	Shooter（ウニ・牡蠣・ホタテ）は、鮮度の高さと旨味の余韻が心地よく、お酒との相性も抜群	贅沢な食材のハーモニーが楽しめる、ウニとネギトロのシソ手巻き。濃厚で深みのある味わいが◎
火を使った華やかなプレゼンテーションが目を引くFlaming Scallopは、甘みと旨味、香ばしさが絶妙に調和しています	シェフのセンスが光るに握り寿司は、ネタごとに味付けがされているので醤油をつけずとも完成された美味しさ	タラのフライにタロ芋チップスを合わせたFish and Chips。香味野菜の効いたアイオリソースを添えた見事な和洋折衷の一皿です