@プールの水に健康リスク
医学誌「Environmental Science & Technology」電子版に2016年4月28日に掲載された、サウスカロライナ大学のSusan
Richardson, PhDの研究で、「プールに使用されている塩素などの消毒薬は、汗、尿、パーソナルケア製品などと混じることで、細胞の遺伝子を傷つける危険な消毒副生成物(DBP)を生じる可能性がある」と報告されています。
この研究では、公共または私有のプールやスパ(温水浴槽)において、通常時と混雑時の使用後に水を採取し、その成分を調査分析しました。その結果、100種以上の消毒副生成物(DBP)が確認され、一般的には水道水の方が消毒済みのプールの水より清潔であり、消毒副生成物による細胞の遺伝子を傷つける「変異原性」はプールの水で2倍、スパの水では4倍になっていたことが判明。
Richardson博士は、、「プールで吸い込む空気は“塩素臭”がすると思われているが、実際にはそれは塩素ではなく、主に尿と塩素が混ざって生じるトリクロラミンというDBPの一種で、水中から空気中へと移行しやすい刺激性物質であり、風邪や喘息のリスクを高めうる。プールに定期的に通う人は膀胱癌や呼吸器障害のリスクが高いことを示した既存報告もある」と指摘し、「屋外では換気されるのでさほど心配ないが、混雑している場合は状況が悪化する。屋内プールでは換気が重要であり、水は頻繁に入れ替えるべきである」と述べています。
Richardson博士が指摘しているように、過去に医学誌「Environmental
Science & Technology」2010年5月1日号に掲載された、イリノイ大学のMichael
Plewa教授らの研究で、「プールに使用される消毒剤が、喘息や膀胱癌などの健康上の問題の発生に関わっている」と報告されています。また、医学誌「Environmental
Health Perspectives」に2010年9月12日に掲載された、スペインの環境疫学研究センター(CREAL)等の研究チームによる論文で、「塩素消毒されたプールで泳ぐと、癌の発症リスクが増える」と報告されています。
塩素は、水泳中に口から飲み込んだものだけでなく、皮膚から吸収するものもあり、健康被害を起こすことが危惧されていましたが、それに加えて消毒副生成物による健康被害も起るリスクがあるということです。特にスパ(ジャグジー)で4倍ということですから、気を付けたいですね。
A硬度の高い水道水で乳児のアトピー性皮膚炎リスク増加
医学誌、「Journal of Allergy and Clinical
Immunology」電子版に2016年4月28日に掲載された、キングス・カレッジ・ロンドン皮膚科学研究所のCarsten
Flohr, MD, MScの研究で、「硬度の高いミネラル水は乳児のアトピー性皮膚炎のリスクを高める可能性がある」と報告されています。
この研究では、英国の生後3カ月の乳児1303人を被験者とし、乳児が住んでいる場所の上水道の硬度(水のミネラル含有量)および塩素濃度を調査しました。その結果、硬水の地域に住む乳児では、アトピー性皮膚炎を有する可能性が最大87%上昇していることが判明しました。
Dr. Flohrは、「自宅に硬水軟化装置を設置すればアトピー性皮膚炎リスクが低減するのか、また、塩素濃度を低下させればさらに利益が得られるのかを評価するための実現可能性試験を始める予定である」と述べています。塩素濃度は浄化装置(フィルター)で比較的簡易かつ安価で低下させることが出来ますが、硬水軟化装置は数百ドルに工賃が掛るため、そう簡単には出来ません。新たな研究結果が待たれます。