先日、パリの航空ショーで行われたSKYTRAX
社*の2019年「ワールド・エアライン・アワード」において、世界で最も優れている航空会社(エコノミークラス)として「ワールド・ベスト・エコノミークラス」賞を受賞したJAL。これは日本の航空会社としては初めての受賞とのこと。そんなJALのエコノミークラスでの旅を実際に成田−オヘア間で体験してきましたので、今回はその模様をお届けします。
以前から、JALの国際線エコノミークラスに導入されている「SKY
WIDER」は、「新・間隔エコノミー」と銘打って、そのゆとりのある居住空間が高評価を受けていましたが、実際に座席に座ってみると、その包み込むような快適さに驚かされました。まず、直ぐに気づくのが前の座席との間のスペースの広さ。この長さのことを業界ではシートピッチと呼ぶそうですが、JALのそれは約84cmから86cmあり、業界の平均である74cmから81
cmと比べるとその余裕は歴然で、SKYTRAX社の発表している各エアラインのシートピッチ比較表と照らし合わせてみてもSKY
WIDERのシートピッチが業界最高クラスなことが分かります。実際、身長174cmの筆者が足を伸ばしても非常にゆったりしていました。また、左右のアームレストの間の幅(シート幅)も約47〜48cmあり、この数値も国際線の業界平均値の41〜45cmを大きく上回ります。そんなJALの「SKY
WIDER」が世界で最も優れているエコノミークラスシートに贈られる「ベスト・エコノミークラス・エアラインシート」賞を今年で3年連続(通算四回目)獲得したというのも納得です。
全てのシートにはPC用の110V電源が席毎に設置されているだけでなく、シートの前にあるタッチスクリーンモニター横には、スマホなどの電子機器を充電する事が出来るUSBジャックもあるのでとても便利。スマートフォンフォルダや小物入れなどはとても機能的に配置されているので、手の届く所に必要なものを殆ど置くことができ、長旅の負担を軽減してくれます。特にメガネを掛ける人にとって、フライト中のメガネケースの置き場というのは悩ましいものなのですが、小物入れがそれにぴったりなサイズになっているので、夜中に目が覚めたときも手探りで直ぐにメガネのありかを手探りで見つけることができるのは嬉しい限りでした。
JALは機内のエンターテイメントの充実度でも群を抜いています。10.6インチと大型タブレットサイズ並みのタッチパネルモニターを使った機内エンターテイメントシステム「MAGIC」には、最新の話題の映画や音楽・お笑い番組、そしてゲームに漫画など、事前にスケジュールを立てて臨まないと着陸前に時間が足りなくなってしまって後ろ髪をひかれてしまうほどの豊富なセレクションが用意されています。また、どういう仕組になっているのか分かりませんが、機内の電気が落ちた後で映画を観続けていても、隣の人には明かりの漏れが最小限になっている上に、エコノミークラスでもアメニティーとしてアイマスクと耳栓が配布されるので周囲の人を気にせずにずっと楽しみ続けることができます。また、有料ですが機内には無線WI-FIサービスがオファーされているので、メールチェックや到着までの仕事をしたいという人にとっても問題ありません。
そして、やはり機内の楽しみの一つというとお食事ですよね。日本発のエコノミークラスでは、「RED
U-35」という料理コンペで上位6名に入賞したシェフによる「若き料理人たちによる機内食」シリーズが用意されています。季節ごとに2名のシェフが監修する新感覚の料理が大好評で、今回搭乗した際の夏メニューでは、「京都
吉兆 嵐山本店」の崎 楓真氏による和食、そして「シエル エ ソル」の音羽 創氏による洋食メニューに舌鼓をうちました。どちらも従来の機内食のイメージを一新するような料理でした。
また、JALにはエコノミークラスとプレミアムエコノミークラスだけでしか楽しめないものも用意されていて、それが、今夏で導入以来第32弾となる大人気の「AIRシリーズ」です。過去には吉野家やスープストックトーキョーなどの有名店とのコラボで知られる「AIRシリーズ」はビジネスクラスのお客さんがCAさんに「なぜ、あれをビジネスで食べれないのか?」と詰め寄られた事があると言われるほどのシリーズです。今回のフライトではモスバーガーとのコラボレーションとして2011年にスタートした「AIR
MOSシリーズ」の第9弾となる「AIR MOSテリヤキバーガー」でした。これまでも空の上で食べる事のできる「モスバーガー」や「焼肉ライスバーガー」、「クリームチーズテリヤキバーガー」などを提供してきたAIR
MOSシリーズですが、今回の「AIR MOSテリヤキバーガー」は正直、これまでの開発の粋が全て込められた最高傑作なのではないかという仕上がりでした。オリジナルのテリヤキソースや機内食専用に開発したハンバーガーパティをシャキシャキした瑞々しいレタスに挟んで食べるのですが、バンズを包んでいる紙の厚みや角度、パテを美味しく保つ為のトレイのちょっとした折れ込みなど、よく見ると随所にこの「AIR
MOS」を美味しく仕上げるための工夫がされているのが分かります。その結果、できあがったテリヤキバーガーは「どうしてこうなるの?」と感嘆させる美味しさです。ちなみに、筆者がAIR
MOSテリヤキバーガーを食べる用意をしていたところ、横に座っていたアメリカ人の若い男性はいまいちコンセプトが理解できていなかったようで、特製テリヤキソースもレタスも使わずにパテだけをバンズに挟んで食べようとしていました。そこで、正式な「AIR
MOSテリヤキバーガー」の食べ方を伝授してあげたところ、目を見張って「OISHII!」を連発してくれました。この日初めて日本の飛行機に乗ったという彼いわく、折り紙か工作でもするかのように食べ物が出来上がっていく様がとってもクールなんだそうです。そうした開発者たちの熱い想いもあって、その後のフライトでその彼とは漫画やアニメの話題で花を咲かせる事ができました。
また、今回エコノミークラスの旅で筆者が感心したのがSKY OASISと呼ばれるセルフサービスコーナーです。これは、長時間のフライトで自由に飲み物や食べ物を楽しむ事が出来るようにトイレの横に設置されている何のことはない簡単なキオスクなのですが、置かれているものはわざわざCAさんを呼びつけてお願いするようなものではないものばかり。でも、こうした心遣いがある所がやはり日系航空会社の良さだなあと感じました。今回のフライト中も、咳をしている私に気づくとキャンディーをコップいっぱい持ってきてくださったり、余っていたひざ掛けをわざわざ持ってきてくださったりという事がありました。確かにシートや機内設備などのハードの部分のクォリティーの高さも称賛に値しますが、同時にソフト部分でも細やかなホスピタリティーを感じさせてクレました。それが、今回座席だけの受賞ではなく、クラス全体としても「世界最高品質」の称号を受けた理由の一つなのかもしれません。
(*) SKYTRAX 社 英国ロンドンに拠点を置く航空業界の格付け会社 http://www.airlinequality.com/
全世界の航空会社が評価・表彰の対象になっている「ワールド・エアライン・アワード」は、SKYTRAX社がオンライン上100か国以上、2000万人以上の航空利用者を対象に独自の調査を行い、集計した結果で各部門のランクが発表されます。
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