夏になるとお父さんたちは大変だ。「今年のお休みにはどこに行きましょうか?」という家族会議でつるしあげられるのである。「去年はあそこに行った、今年はどこに行きたい・・・」そのようなある意味「モンスターファミリー」ともいうべく強敵の猛攻撃にあい、お父さんはつい、庭の愛犬ポチに語りかける。「お前もどっかにいきたいか?」「・・・ワン」ついにポチにまでリクエストされたお父さんはコンピュータの画面に向かいインターネットで色々バケーションのチョイスを探す。とりあえずハヤリの「安・近・短」(安くて、近くて、短い)でなんとかこの場をしのげないものかと・・・・
「安・近・短」で済ますバケーションアイディアというと、中西部ではどうしても車を使っての片道3時間程度の街が適当であろう。ウィスコンシン南部、インディアナ北部、ミシガン西部くらいまでが範囲に入ってくるが、今回お勧めなのは同じイリノイ州の北西にあるGalena
Illinoisだ。Galenaは19世紀半ばの古きよきアメリカを残した歴史情緒のただよう街だ。Galenaの周辺は氷河期に、氷河による北米の土地の多くであったような平坦化(Flattened)が起こらずに、丘陵地が残された地域のため、車で走っていてもアップダウンのある風光明媚な風景が続く中西部でも珍しい地域だ。元々この地域はNative
Americanの住んでいた時代から亜鉛がとれる土地だったため、17世紀後半からフランス人が入植し始め、ミシシッピ川の水運を利用し、ひとつの貿易拠点として開拓した。それから19世紀には合衆国議会でUpper
Mississippi 亜鉛鉱床地域として承認され、Galenaの街ができあがった。Galenaという名前は鉛の硫化鉱物である「方鉛鉱」という意味である。まさに「鉛の街」として発展したGalenaは19世紀半ばに最盛期を迎える。ミシシッピ川に通じるGalena川の水運を活かし、1845年には約25,000トンもの亜鉛を運んだとの記録がある。雇用も大きくなり、その頃には隣街のFreeportまで鉄道が敷設され、人口は14,000人を超えた。しかし、やがてカリフォルニアのゴールドラッシュの影響による労働力の流失で人口は19世紀半ばをピークに減少していくことになる。現在のGalenaの人口は約3,600人であるが、現在もそれこそ街の85%が18世紀から19世紀にかけて建造された繁栄期の歴史的建造物が残され、その趣は今も変わらず受け継がれている。
風光明媚な丘陵地のドライブが続く国道20号線を西にひたすら進むとGalenaの街が見えてくる。シカゴ方面からいくと先ずThe
Grant Homeのサインが目に入る。The Grant HomeはGalenaを代表する建造物である。この家は第18代アメリカ合衆国大統領のユリシーズ・グラントの居住した家で。南北戦争の功績をたたえて寄贈されたものだ。The
Grant Homeは現在、歴史的建造物として一般公開されている。
The
Grant HomeからGalena川を挟んだ対岸にGalenaのDowntownがある。この間には橋がかけられており、徒歩で容易にアクセスできる。橋を渡るとその土手からGalenaの街全体を眺めることができる。街の中心は赤いレンガ建ての建物が並ぶガス燈通り、丘の上には教会の高い屋根やビクトリア調の邸宅が立ち並ぶ。ちょっとした異国情緒を感じながら散歩できる。街はいま多くがお土産物やレストランであるが、アブラハム・リンカーン、ウィリアム・ジェニング・ブライアンなどの大統領が利用したしたというDe
Soto Hotelもある。De Soto Hotelは現在も営業中で、Galenaでの宿泊を考えるなら是非候補にいれておきたいホテルだ。
今回はお父さん救済のための家族旅行アイディアであるのだが、ここまでだと子供の楽しめるアトラクションが少ない気がする。正直なところ私も経験があるのだが、子供の目からは歴史的建造物鑑賞はどうしても難しいところがあり、限界がある。そこで切り札を用意しておこう。以前に紹介したこともあるが、このGalenaにはChestnut
Mountainという中西部屈指のスキー場がある。この冬場は賑わうスキー場が夏場にスキー場ならではの立地を利用した、アトラクションが人気である。Slideと呼ばれるものだが、これはコンクリートのレールに特製のソリを乗せて滑降するものなのだが、これは抜群に子供に人気である。お父さんの株を上げるために是非旅程にいれておいていただきたい。
これからのシーズン、日本からのご友人やご親族の訪問も増える時期である。毎回、どこにいこうかと悩んでいるお父さん!庭のポチもつれて、「安・近・短」で中西部小旅行は是非お奨めである。大型リゾート、観光施設にはない古きよき何かで家族の絆も確かめてくれるであろう。
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