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出鼻をくじかれた、とはまさにこのこと。4月5日、シカゴのリグレーフィールドで行われたメジャーリーグのシーズン開幕試合、セントルイス・カージナルスとの一戦にカブスの和田毅投手の姿はなかった。理由は左太もものけが。球団から15日間の故障者リスト入りが発表された。
昨季途中から先発ローテーション入りを果たし、その働きぶりを評価されて年俸400万ドルで契約を更新した和田投手。背番号を日本ではエース≠フ代名詞になっている「18」に変更したのは、自身初となる開幕メジャー入り、そして、初の2桁勝利への意気込みの表れと言ってよかった。
ところが、2月末のキャンプ初日の投球練習中に左脚付け根に張りを感じ、暗雲がたれこめた。別メニューで調整して3月8日にはオープン戦初登板を果たしたが、1回を投げ終えた後に左内転筋に違和感。左投手にとって左脚は投球フォームの軸足となる大切な箇所でもある。大事を取って交代した。しかし、中4日で臨んだ同13日の試合でも左太ももに張りを訴え、1回途中で緊急降板した。
今月2日にはマイナーを相手に投げられるまでに回復したが、オフにエース左腕のジョン・レスター、ジェイソン・ハメルの2投手を獲得するなど、カブスの先発陣の層は厚い。無理をする必要がない状況もあって治療に専念することに決めたのだった。
このほど大リーグ機構から発表された今季開幕時の故障者リスト入り選手は115人。米メディアによると、記録が残っている1995年以降では最多の数だという。現在、メジャーに在籍している日本生まれの選手は9人。しかし、けがによる戦線離脱は和田投手だけではなかった。
もっとも衝撃的だったのは、テキサス・レンジャーズのダルビッシュ有投手だろう。昨季は右肘炎症のためにシーズン最後2カ月を棒に振った。今年のキャンプは万全を期して臨んだはずだったが、オープン戦初登板となった試合でわずか21球を投げただけで右肘が悲鳴を上げた。精密検査の結果、右肘靭帯に損傷が見つかり、修復手術(トミー・ジョン手術)を受けた。
今季は最優秀投手賞にあたるサイ・ヤング賞の最有力候補にも挙がっていた投手である。リハビリに最低1年の時間を要する。順調に回復したとしても復帰は来シーズン半ばだ。
悪いことは重なるものです。和田、ダルビッシュ両投手以外にも昨季までカブスに在籍し、今季から心機一転、ダルビッシュ投手と同じレンジャーズでプレーする藤川球児投手も開幕直前に右脚付け根に張りを訴えて故障者リストに入った。メジャー1年目の2013年5月に右肘の靭帯修復手術を受け、昨季終盤に復帰したばかりである。完全復活を目指すシーズン。こちらも出鼻をくじかれた格好だ。
さらに、メジャー在籍の日本人投手では最年長となる40歳、ボストン・レッドソックスの抑えの上原浩治投手も3月中旬に古傷でもある左もも裏を痛めた。2年前のワールドチャンピオンの功労者。チームは昨季、地区最下位に沈んだが、今季は地区優勝筆頭候補にもなっている。完全な状態でマウンドに上がるために故障者リストに入った。勝負どころのシーズン終盤を見据えれば、賢明な判断と言っていい。
日本人4投手の戦線離脱。特にダルビッシュ投手の手術で心配されているのが、ニューヨーク・ヤンキースの田中将大投手だ。メジャー1年目だった昨年8月に右肘靭帯の部分断裂が見つかった。手術は回避できたが、不安を抱えたまま投げている。
4月6日のブルージェイズとの開幕戦で先発したが、4回5安打5失点で敗戦投手となった。昨季前半だけで11勝を挙げたピッチングには程遠い内容。7年1億5500万ドルの超大型契約の2年目である。チームにとって長期の離脱は避けたいところ。勝敗はともかく、周囲の雑音を封じるためにも質の高い投球が求められる。
あるメジャー球団のスカウトからこんな話を聞いたことがある。
「日本の投手の質は非常に高い。メジャーで通用するのは野手よりもピッチャー。日本人選手に関しては我々はピッチャーしか見ていない」。
ダルビッシュ投手以外の3投手は4月中の戦列復帰が予想される。今季の状況だけで日本人投手に対する評価が下がることはないだろう。しかし、今後の契約内容に影響することは十分に考えられる。 |