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今季の年俸2200万ドルは円に換算すると約24億2000万円になる。今季は20試合に登板したから1試合当たりの金額は1億2100万円。542人の打者と対戦したから1人当たり446万円。全部で2009球を投げたから1球当たり120万円になる。
これらの金額、すべてニューヨーク・ヤンキースの田中将大投手にまつわる数字だ。
もちろん、その裏には田中投手が投げる試合を観るためにファンが買うチケット代、グッズの売り上げ、テレビや新聞といったメディアの露出など、いわゆる経済効果が存在する。
とはいえ、1球ビュンと投げて120万円!
マウンドから捕手のミットに収まるまでに要する時間は0・5秒だから、時給になおせば、…もうやめよう。
昨季は24勝0敗という無敵のピッチングで東北楽天ゴールデンイーグルスを初の日本一に導いた田中将投手。ヤンキースと7年総額1億5500万ドル(約170億円)の超大型契約を結び、鳴物入りでメジャーリーグにやってきたのは記憶に新しいところだ。
今季最も注目された選手と言ってもいいだろう。
メジャー初登板となった4月4日のトロント・ブルージェイズ戦では7回6安打2失点で初勝利。以降、5月14日のニューヨーク・メッツ戦まで破竹の6連勝を記録した。
シカゴ・ホワイトソックスには同じメジャー1年目、キューバ出身のホゼ・アブレイユ内野手が本塁打を量産していたが、一部のメディアは早くも田中投手が新人王はもちろんのこと、投手最高の栄誉とされるサイ・ヤング賞、さらにはリーグMVPを獲得すると予想。日本に負けない加熱報道を展開した。
5月20日のシカゴ・カブス戦で初黒星を喫したものの、その後は5連勝。6月17日の時点で11勝1敗、防御率1・99。170億円の投資に見合う結果を残していた。
ところが、6月22日のボルティモア・オリオールズ戦は7回3失点で2敗目、続く28日のレッドソックス戦では9回に勝ち越し弾を浴びて初の連敗。7月3日のミネソタ・ツインズ戦では12勝目を挙げたものの自己ワーストの4自責点を記録した。
そして、中4日の登板間隔で投げた7月8日のクリーブランド・インディアンス戦で異変が起こった。試合後の会見では明かさなかったが、すでに球団のトレーナーには右肘に痛みを訴えていたのだった。すぐに遠征中のチームから離れてニューヨークに戻り、検査を受けたところ右肘に炎症が見つかった。さらなる検査の結果、右肘の靭(じん)帯に部分断裂が見つかった。断裂部分は10%未満だったことから手術は回避できたが、復帰まで最低6週間の診断が下された。
順調に回復すれば9月上旬に戦列復帰の見込み。しかし、痛みが消えるまで予定より1週間以上遅れ、リハビリの段階で右腕に張りを訴えてさらに1週間。結局、戦列に戻ってきたのはチームのプレーオフ進出の可能性が絶望的となっていた9月21日だった。
シーズン8試合を残しての復帰。10日もしないうちにシーズンが終わるタイミングで投げる意味があるのか?そんな声が噴出する中、田中将は球数が70球に制限されたトロント・ブルージェイズ戦で5回1/3を投げて5安打1失点と好投し、13勝目を手にした。
気の早い一部のメディアは『復活』と報じたが、先発投手のノルマは100球。それを5日ごと、6日ごとに継続して投げなければいけない。74日間のリハビリ期間をへて万全な状態でマウンドに上がり、しかも、わずか70球では『復活』もなにもあったものではない。しかも交代したのは1点リードの5回1死一、二塁の場面。あのまま続投していたらどうなっていたかわからなかった。
そんな心配が的中するかのように6日後に登板した同27日のレッドソックス戦で田中投手はメッタ打ちを食らった。自己最短の1回2/3、同ワーストの7失点で予定されていた85球には遠く及ばない50球で降板した。最悪の結果でメジャー1年目のシーズンを終えたのだった。
本人は試合後もその翌日も右肘の状態が良好であることを強調したが、来季は先発の柱として投げられることを確認し、安心するために投げた2試合は、逆に不安を増幅する結果となってしまった。
メジャー1年目の成績は、20試合に登板して13勝5敗、防御率2・77。
年間162試合を戦うメジャーリーグ。先発投手がローテーションを守り続ければ、33試合を投げることになる。田中投手の来季は今季と同じ、年俸2420万ドル(約24億円2千万円)。来年は1試合当たり、打者1人当たり、そして、1球当たりの金額がいくらになるのか、非常に興味深いところだ。
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