だれが最初に言ったか知らないが、『バカ発見器』とは言い得て妙だ。
ツイッター。
海の向こうの日本では、ホテルの従業員が有名人の宿泊を明かしたり、飲食店のアルバイトが店内や冷蔵庫で悪ふざけをする写真を投稿したりして、社会問題にもなっているようだが、メジャーリーグ界でもツイッターに関する問題は日常茶飯事となりつつある。
6月初旬、シカゴ・カブスの傘下にある3Aアイオワでプレーしていたイアン・スチュワート三塁手がツイッターでつぶやいた内容が大きな問題に発展した。
ファンからの質問だろうか。今後メジャーでプレーする可能性を問われ、こう返答したのだ。
「2度とないだろうね。理由はカブスが俺に見切りをつけているからね。ずっと3Aでプレーさせ、シーズン後に切るんだろう。昇格の可能性がないならクビにした方がいい…他のチームと契約させてくれ」
年俸200万ドル。メジャーで487試合に出場した実績のある選手である。しかし、近年はけががちで、当時の成績も打率・168、113打数で45三振。とてもメジャーでプレーできる数字ではなかったが、よほど自信があったのだろうか。それとも日頃のうっ憤をぶちまけたかったのか。
このツイートに対し、球団が激怒したのは言うまでもない。まず10試合の出場停止処分を科し、本人との話し合いの結果、戦力外通告を言い渡した、10万ドルの金をつけて。黙ってシーズン最後までプレーしていれば、残りの年俸100万ドルを手にできた。ベンチ登録選手が25人から40人に拡張される9月にメジャー昇格できたかもしれない。
その後、ロサンゼルス・ドジャースとマイナー契約を結んだところを見ると、確信犯では?と勘繰ってしまうが、そんな計算ができるならもっと賢い方法でチームを出ていっただろう。ちなみにドジャース傘下の3Aでは、打率はわずか・174。86打数で38三振。心機一転のはずが、なんにも変わってはいない。
クリーブランド・インディアンスのブレット・マイヤーズ投手のアカウントが炎上したのは7月中旬のことだ。
ニューヨークで開催されたオールスターゲームのMVPについて異議を唱えたのだ。
MVPに選ばれたのはニューヨーク・ヤンキースのマリアノ・リベラ投手だった。
すでに今季限りの引退を表明している43歳のクローザー。メジャーの通算セーブ記録保持者でもある。将来の殿堂入りは確実で、史上最高のクローザーと呼ぶ者もいるほどの投手についてこうつぶやいたのだ。
「マリアノ・リベラがこれまでやってきたことは高く評価されるべきだが、MVP????それは違うでしょ!マリアノは一流の投手であり、尊敬されるのは分かるが、メディアはだれがMVPに当たるかを正しく判断すべきだ」
やってしまった!
スチュワートよりもタチが悪いのは一個人を巻き込んでいる点だ。しかも、対象にしているのは自身と同じ投手ではあるが、自分よりもはるかに実績のある投手だ。
「だまれ!」、「お前は一体だれなんだ?」、「酔っぱらってるなら早く家に帰れ!」などなど、不快感をあらわにするコメントが次々と投稿された。
確かに、3点リードの8回を無安打無失点に抑えた投手がMVPに選ばれたことを疑問視する声はあった。もしそれが他の投手だったら、MVPに選ばれていなかっただろう。
「MVPはチームに得点をもたらし、マリアノがヒーローになる機会を与えた打者がふさわしい」。そう持論を展開したマイヤーズに同意する投稿があったのも事実だ。
しかし、オールスターゲームは年に1度の『祭り』である。史上最年長&史上初の中継ぎ投手のMVP受賞。それはそれで盛り上がってよいではないか。
「お前が打席に立った時はモー(リベラの愛称)から顔面にボールをぶつけられることを願ってるぞ」。さらにはDVの過去まで蒸し返されるなど、一旦、炎上したアカウントはそう簡単には鎮火しなかった。
そして、スチュワート同様、マイヤーズにもオチがある。
8月29日にインディアンスから戦力外通告を受けたのだ。
今季の年俸700万ドルの契約を結びながら、成績は0勝3敗、防御率8・02。右肘を痛めて4月20日に故障者リスト入りした後は一度もメジャーで投げてはいなかった。チームはプレーオフ進出の可能性を残していた。過去に2桁勝利を挙げているとはいえ、力を発揮できない選手を抱える余裕はないということだろうが、ツイッターでの騒動に見る素行の悪さが多少なりとも影響した可能性はゼロではないはずだ。
ツイッター。つぶやく内容に周囲がどんな反応を見せるのかをよく考えなければ痛い目を見る。『バカ発見器』は少々、言い過ぎの感はあるが、その人間の思慮の深浅が透けて見える道具であることは間違いない。
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