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「なう」。
最近、知った“言葉”だ。
70年から80年にかけて流行した「今風の」を意味する「ナウい」と同じく、語源は英語の「NOW」だが、表記はカタカナではなく、ひらがな。使い方は「テレビ見てるなう」、「ご飯食べてるなう」といった具合。現在進行形で「今〜やってるよ」を意味するらしい。
この“言葉”を知るきっかけは、日本のプロ野球チーム「北海道日本ハムファイターズ」のエース、ダルビッシュ有投手のツイッターだ。今オフにポスティング・システム(入札制度)を利用してメジャーリーグに移籍する可能性があると言われている選手。どんな人間なのかを少しでも知ることができたらと思い、読み始めた。
ちなみに、ツイッターは、日本では「つぶやき」とも訳されており、140字以内で情報を発信する、世界で最も“ナウい”コミュニケーション・ツール。ユーザー登録さえすれば、芸能人やスポーツ選手といった有名、著名人とも直にメッセージのやり取りができ、プライベートな部分をのぞけるということで爆発的なブームを呼んでいる。ダルビッシュもそのツイッターを使って1日数回、その時々の行動や心境をつぶやいているというわけだ。
10月4日には東北楽天ゴールデンイーグルスのエース、岩隈久志投手が一足先にポスティング・システムでメジャーを目指すことが決定。ダルビッシュが動いたのは、それから約2週間後のことだ。日本時間の10月19日午後8時20分、ツイッターに「ブログ更新しました」とのつぶやきとともに自身のブログのアドレスを記した。
タイトルは「来年の事」。ブログはツイッター同様、基本的にはファンに向けた情報発信だ。メッセージはこんな一文から始まっている。
「メジャーどうこう言われています」。
大阪出身らしく、関西弁がにじみ出ている。開幕直後に一部スポーツ紙が「来季メジャー挑戦」をスクープのごとく1面でやっている。それらをけん制するかのような書き出しだった。
さらにメッセージは続く。
「ブログやTwitterにもたくさんのコメント頂きましたが、皆さんの予想が合ってるかどうかわかりませんが。来年は・・・」
ここでひとつタメを作る。読み手の頭の中にドラムロールを奏でさせるかのような演出だ。いかにも大阪人らしい。
そして、発表する。
「北海道日本ハムファイターズのユニホーム着ていますよ」
「メジャー移籍確実」とこぞって報じたメディアに肩透かしを喰らわし、ファイターズのファンにうれし涙を流させた残留宣言だった。
実は、ダルビッシュ本人が公の場で話したことがないにもかかわらず、あたかも事実かのように周囲が描き、信じられているストーリーがある。
ダルビッシュがチームを去らなければいけない理由は、高額な年俸。今季のそれは3億3千万円で、日本ハムにこれ以上、出す体力はないと言われている。一方のダルビッシュもそのことを重々承知しており、高卒の自分の育ててくれたチームに恩返しするためにも、何も残せないFAより所属球団に選手との交渉権料を支払う義務のあるポスティング・−で移籍した方がいいと考えているようだ。
気の早い一部の米メディアは落札額を8000万ドルと予想。07年にポスティング・−でボストン・レッドソックスに移籍した松坂大輔投手の5111万1111.11ドルを上回るのは確実と報じた。さらに、メジャーの今オフのFA市場における先発投手の人材は乏しいこともあり、日本球界最強右腕の呼び声の高い24歳にとってメジャー移籍の絶好のタイミングとも言われていたのだった。
それだけに今回の残留宣言に日米のメディアが大騒ぎ。ブログに寄せられたコメントは4000を越えるなど、その反響の大きさは相当なもの。
その後のツイッターでダルビッシュはファンの喜びに感謝しつつ、「生まれて初めて腹筋がつった。・・・つって1番痛い部位NO1に認定」、「下半身を追い込んだため目充血なう」などと、日々のトレーニングの様子をつぶやている。
イラン人の父と日本人の母をもち、日本に強い誇りをもっているとも言われている。ブログでは「来年は」としたが「これからも」と記していない点が気になるところ。これからもダルビッシュの言動を見守っていきたい。
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