今ではすっかり忘れ去られてしまっているだろうが、メジャーリーグで今季ほど各球団の中堅手の顔ぶれが変わったシーズンはなかった。中堅手と言えば、外野の中心に位置し、主導権を握る花形ポジション。注目度が高く、チームの顔としての役割を担う選手が多い。
毎年、オフになると200人以上の選手がフリーエージェント(FA)の申請を行うメジャーリーグ。選手たちはよりよい条件を求めて翌年の働き場所を探すのだが、07年オフはその中堅手に大物選手が多かったこと、お目当ての選手の獲得に失敗した球団が打開策としてトレードに走ったことが“シャッフル”に拍車をかけた。また、日本でプレーしていた福留孝介外野手がメジャー移籍を発表したこと(カブスは右翼手で起用)も大きな話題となった。その結果、今季開幕時にはリーグ全30球団のうち、実に12球団の中堅手が他球団からやってくるという珍現象が起こったのだった。
主なチームの中堅手の変更は以下の通り。
エンゼルス |
マシューズ→ハンター |
ドジャース |
ピエール→An・ジョーンズ |
ジャイアンツ |
ロバーツ→ロワンド |
レンジャーズ |
ロフトン→ハミルトン |
レッズ |
ハミルトン→パターソン |
ホワイトソックス |
アンダーソン→スゥイッシャー※シーズン中にグリフィー獲得 |
カブス |
J・ジョーンズ→ジョンソン |
ブルワーズ |
ホール→キャメロン |
パドレス |
キャメロン→エドモンズ※シーズン中にカブスへ |
当然これらの選手の動きによって空いた中堅手の穴を現有戦力で埋めた球団もあり、ハンターを失ったツインズはゴメスを、ロワンドを失ったフィリーズがビクトリーノを起用して成功した例もある。気になるのは各選手の今季の働きぶりだが、その前に予備知識として移籍までの経緯を簡単に。メジャー球界を最も驚かせたのは、ハンターだった。7年連続ゴールドグラブ受賞の守備の名手は打撃でも中軸を担う力がある。古巣のツインズを含め、6球団が獲得競争を繰り広げる中、合意したのはその候補に入っていなかったエンゼルス。しかも、5年9000万ドルという他を圧倒する契約だった。それが昨年11月21日のこと。そこから一気に各球団の動きが活発化。12月5日には10年連続Gグラブ受賞のAn・ジョーンズがドジャースと2年3620万ドル、年平均ではハンターを10万ドル上回る、代理人のスコット・ボラスらしい条件で合意した。その1週間後にはロワンドが5年6000万ドル、同じ日に福留が4年4800万ドル、どちらも年平均1200万ドルという超破格の金額だった。
では、この中で最も活躍した中堅手はだれか。それは、ア・リーグ打点王を獲得したレンジャーズのハミルトンだ。ハンター、An・ジョーンズを取り損ねたレンジャーズが若手有望投手と引き換えにレッズから獲得した選手。序盤から打ちまくり、一時は打率、本塁打、打点でリーグのトップにも立った。球宴の本塁打競争でも爆発し、薬物中毒の過去があることも大きな話題となった。逆に最も落胆させたのはドジャースのAn・ジョーンズであることは間違いない。07年の打率が・222だったにもかかわらず、2年契約ながら大金を手にした。しかし、けがでわずか77試合の出場に終わり、打率は・158。ゴールドグラブどころではない散々なシーズンとなった。
今年もワールドシリーズの終了後にFAの申請が始まる。戦力補強のために各球団が激しいバトルを繰り広げるストーブリーグ。チームとしてではなく、ポジション別で選手を比較するのもまた一興だ。
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