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アイスホッケーの福藤豊選手がNHL(北米ホッケーリーグ)のロサンゼルス・キングスと契約して日本人初の快挙を目指しているが、NBA(全米プロバスケットボール)でも一人の日本人選手が再び、その扉を開こうとしている。
田臥勇太選手がロサンゼルス・クリッパーズと契約したことがこのほど発表されたのだ。田臥と言えば、昨年はフェニックス・サンズでプレーし、NBA史上初の日本人プレーヤーとなって大きな話題を集めたことが記憶に新しい。11月3日のアトランタ・ホークスとの開幕戦で10分間出場し、7得点、1アシストをマーク。衝撃的なデビューを飾った。
ところが、その後は出場のチャンスに恵まれず、開幕から45日目の12月18日に解雇通告を受けたのだった。残した数字は、4試合、14分間に出場し、10得点、3アシスト、4リバウンド。控えのポイントガードではあったが、出番はいつも20点差以上がついた場面。勝負どころで起用されることはなかった。
サンズを退団後は古巣でもあった独立リーグABA(American Basketball
Association)のロングビーチ・ジャムに所属し、12試合の出場で1試合平均9得点、6・3アシスト。プレーオフではチームの優勝にも貢献した。
さて、今回、新たに契約を結んだクリッパーズ。思い出されるのは昨年10月28日ロサンゼルスのステープルズ・センターで行われたプレシーズンゲームだ。サンズのユニホームを着た田臥に大きな歓声が上がったのだ。確かにその日は数多くの日本人ファンが詰め掛けていた。身長175?(シューズを脱ぐと173?)、体重75?。フロアに立つとその小ささが際立つ選手にアメリカ人のファンも声援を送った。
敵地でありながらこれだけの声援。すでに人気の高さは実証済みだ。ちなみに、サンズでプレーしていた田臥には日本からやってきたNHKの取材陣が密着し、特集番組を製作。開幕2日前にはサンズのホームページの田臥へのアクセス数は約4万。スーパースターのコービ・ブライアント(レーカーズ)に2倍以上の差をつけた。大きな経済効果といってよかった。
03、04年はNBAの各チームが主催するサマーリーグに招待され、過酷なサバイバルゲームを勝ち抜いてトレーニングキャンプに参加してきた田臥。クリッパーズがサマーリーグを“免除”したのは、その力量もさることながら、人気も加味していることは否定できない事実だろう。写真付きトップニュースとして球団公式ホームページで発表していることからも“タブセ効果”を期待していることは明らかだ。
だからと言って、開幕メンバーを確約されたわけではない。開幕登録選手は12人+故障者リスト3人の計15人。ポイントガードは3人と予想される。現在のクリッパーズのロスターを見ると、オフにミネスタ・ティンバー・ウルブズから移籍してきたオールスター選手のサム・キャセールは別格。10月上旬から始まるキャンプでは、イリノイ州ピオリア・セントラル高出身の2年目、ショーン・リビングストン、デューク大ではシューティングガードだった新人のダニエル・ユーイングとバックアップの枠を争うことになる。
田臥の持ち味はスピード。しかし、それだけでは生き残っていけないことは過去2年で痛感している。課題であり、基本でもあるシュートとゲームをコントロールする力をどれだけ向上させているか。勝負は1カ月。新たな挑戦。その進化を見せつけてほしい。
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