世界保健機関(WHO)伝統医学協力センター長・北里大学院教授の花輪壽彦医師は、「女性の不妊症では脳下垂体や卵巣から出るホルモンなど妊娠に関係している種々のホルモンのバランスが崩れている場合や、男性不妊でも軽度の精子数の減少や運動率の低下などにも漢方治療による効果がある」と述べています。
女性には、
●当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):ホルモンバランスや全身の血行の改善
●芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう):プロラクチン(乳せん刺激ホルモン)やテストステロン(男性ホルモンの一種)が高い
●香蘇散(こうそさん)や半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう):妊娠したいという気持ちがストレスになっている、などがよく用いられます。
男性には、
●補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
●八味地黄丸(はちみじおうがん)が精子の数や運動率を改善などに用いられます。
★漢方薬に副作用はありますか?
漢方薬にも副作用のリスクは存在します。 また不妊症だからとどんな患者にも同じ漢方薬を出すことは、効果が期待出来ないばかりか、副作用のリスクだけが増えることに繋がります。
この記事の情報を見て、漢方製剤を薬局・薬店や通販などで購入し、勝手に服用するのは危険ですから避けて下さい。
★漢方薬は安全ですか?
1.医学誌「Science
Translational Medicine」2013年8月7日号に掲載された研究で、「中国伝統薬に用いられる植物の1種、ウマノスズクサの抽出物アリストロキン酸に癌と直接的な関連があり、驚くほど多くの遺伝子変異の原因となっている」と報告しています。
2.スウェーデン食糧庁は2013年7月16日、「中国伝統薬の牛黄解毒片から極めて高い含有量の無機ヒ素が検出された。この薬を用法通りに服用すると、最悪の場合、1日に致死量の半分に相当する無機ヒ素を摂取することになる。摂取すれば誰でも非常に深刻な健康被害を受ける恐れがある」と発表しました。
3.国際環境保護団体グリーンピースは2013年6月24日、「中国漢方薬草:健康の妙薬、それとも農薬カクテル?」という報告書を発表し、「中国で漢方薬草65サンプルの独自調査を実施した結果、65サンプルから51種類もの残留農薬が検出された。残留農薬濃度が欧州連合(EU)の食品安全基準の数百倍に達していた薬草サンプルもあり、更に26サンプルからは中国でも違法な農薬が検出され消費者の健康や環境への害が懸念される」と警告しています。
副作用が少なく、健康に良いと思われている漢方薬ですが、上記の3件の調査・研究によって、その危険性が指摘されています。
妊活という目的の場合、安全性という観点からは第1選択肢の治療法には適当ではない可能性があるということですね。