●1時間に2分歩くことで便益
医学誌、「Clinical
Journal of the American Society of Nephrology」電子版に2015年4月30日に掲載された、ユタ大学医学部内科教授のSrinivasan
Beddhu, MDの研究で、「1時間ごとに2分、立ちあがって歩くことで、座り続けていることによる健康への悪影響を軽減できる」と報告されています。
この研究では、全米健康栄養調査(NHANES)に参加した3200人超を被験者とし、運動強度を計測する機器を装着させてデータを収集し、歩行などの軽い運動と、立っているなどの低強度の運動のいずれかをより長く行った場合の便益を比較検討しました。3年間の追跡期間中に137人の死亡が確認されました。
分析の結果、長時間座り過ぎていることで生じる健康リスクを、ただ立っているだけの運動を時々行うだけでは打ち消すことは出来ないことが判明しました。また、1日の半分以上を座って過ごしている人であっても、1時間あたり2分間、座っている時間を歩行や掃除、ガーデニングなどの軽い運動を行うことで、若年死亡リスクが33%低下することも判明しました。
Beddhu教授は、「中等度の運動は心臓、筋肉、骨を強くし、軽度の運動では得られない健康上の便益がもたらされる事から、成人は週に少なくとも2.5時間の中等度の運動をする事が推奨されている。しかし、今回の研究結果から、毎日長時間座り続けている人は、それに加えて1時間あたり2分間の歩行を行うことが勧められる」と述べています。
●1日2時間は座るより立つ
医学誌「European Heart Journal」電子版に2015年7月31日に掲載された、豪クイーンズランド大学のGenevieve
Healy博士の研究で、「座る時間が長いと血糖値や脂質値が上昇し、体重増加、心疾患の発症につながるが、1日に2時間を座位から立位に替えることで、これらの指標が改善する」と報告されています。
この研究は、オーストラリア糖尿病・肥満・生活様式研究に参加した36〜80歳の男女782人を被験者とし、血液検査、血圧・ウエスト周囲長・身長・体重(BMI)測定を実施した上で活動量計を24時間7日間装着させて、@座位、A臥位、B立位、C歩行、D走る、などの活動に費やす時間を追跡し、分析しました。
その結果、1日2時間を座位から立位に替えると、空腹時血糖値が2%、トリグリセライドが11%それぞれ有意に低下し、立っている時間が長いほどHDL-C増加とLDL-C低下に関連することが判明しました。
また、1日2時間を座位からウォーキング(歩行)に替えると、食後2時間血糖値の11%低下、トリグリセライド値の14%低下に関連し、さらに歩行やランニングに替えた場合はBMIが11%低下し、ウエスト周囲長が7.5cm減少することも判明しました。
Healy博士は、「座る替わりに立つことが心血管代謝に好影響をおよぼす。座らずに立つ時間を長くすることで血糖値やコレステロール値は改善し、さらに、座る時間をウォーキングに替えることでウエスト周囲長やBMIの改善も図れる」と述べています。
これまでも多くの研究で、「座っている時間の長さが糖尿病や心疾患、若年死亡に関連する」と報告されていますが、今回の2つの研究では、座り続けるのを止めて、立ち、そして歩くことの便益が証明されました。参考にしては如何でしょうか。