●鼻炎に抗生物質は効果なし
医学誌「Journal of the American Medical
Association」2012年2月15日号に掲載された、ワシントン大学の研究チームの論文で、「副鼻腔炎の患者に抗生物質を投与しても、ほとんど効果がないことが判明した」と報告しています。
この研究では、米国の成人に処方される抗生物質の約20%が副鼻腔炎の患者に対しての処方であるが、その有効性について証明されていなかった事から、急性単純性副鼻腔炎の成人患者166人を被験者とし、一般的に使用されている抗生物質アモキシシリンを与えるグループと、プラシーボ(偽薬)を与えるグループに分け、効果を比較した。
患者は鼻水などの症状が7〜28日間続いており、症状の重さは中度、重度、極めて重度の3つのレベルでしたが、研究実験の結果、「抗生物質アモキシシリン群とプラシーボ群との間で、回復が早まったり症状が軽減されたりといった症状の改善に有意差がない」ということが判明しました。
研究者らは、「実験結果は、基本的な副鼻腔炎では抗生物質が必ずしも必要ではないことを示している」と述べると共に、「抗生物質の使用は症状が重度か極めて重度の患者に限定すべき」と指摘し、抗生物質の過剰使用がもたらす危険性について警鐘を鳴らしています。
患者さんの多くは、「抗生物質は効く」と信じていらっしゃると思いますが、科学的な研究で「効果は無い」と判明したことから、実は効いたと思い込んでいただけで、抗生物質を呑んでも呑まなくても症状の改善には差がなかったのです。しかし、抗生物質を呑めば副作用・有害反応のリスクは付加されます。
同様の研究として、「子供の中耳炎に対する抗生物質は無効である」と英国医学ジャーナルに3つ以上の論文が掲載されている事実からも、「抗生物質神話」は医学界では既に崩壊しています。抗生物質に頼るより、自分の免疫力を高めて治癒を促すことが現実的であり安全であり、かつ合理的な対処法といえるようです。
●睡眠薬が死亡および癌のリスク増大と関係
医学誌「British Medical Journal」オンライン版に2012年2月15日に掲載された、Scripps
Clinic Viterbi Family Sleep CenterのDaniel
Kripke博士の研究で、「睡眠導入薬の常用と死亡リスクや癌の発症リスクの増大に関連性が判明した」と報告されています。
この研究では、さまざまな健康状態の1万500人以上(平均年齢54歳)を対象とし追跡調査を行い、2002年〜2007年に平均2年6ヶ月の間、睡眠薬の処方を受けていた患者群と、睡眠薬を使用しなかった被験者群の死亡および癌のリスクを比較した。
研究の結果、1年間に18回量未満を処方された群では非処方群に比べて死亡リスクが3.6倍、18〜132回量処方群では4倍以上、132回量超処方群は5倍であった。この死亡リスク増加は18〜55歳の人で顕著であった。
また、最も高用量の群では食道癌やリンパ腫、肺癌、大腸癌、前立腺癌などの発症リスクも高くなることが判明した。
これらのリスクと関係する睡眠薬には、ベンゾジアゼピン系薬剤のtemazepam(Restoril)、非ベンゾジアゼピン系薬剤のゾルピデム(Ambien)、eszopiclone(Lunesta)、zaleplon(Sonata)、バルビツレート系薬剤、鎮静薬の
抗ヒスタミン薬が含まれる。
研究期間中に死亡したのは、ゾルピデムを服用していた患者4,336人中の265人、対して鎮静薬、睡眠薬ともに服用しなかった被験者2万3,671人では295人であったが、Kripke博士は「よく使用される睡眠薬が衝撃的な死亡リスクの増加と新たな癌の増加との関連性が判明した。これらのリスク増大を説明しうる既知のメカニズムは多数ある」と述べています。
今回の研究は睡眠補助薬と死亡および癌リスクの関連性を示したもので、因果関係を示すものではないため、NYのVictor
Fornari博士は、「必要に迫られ医師の処方を受けている場合、早急な投薬中止は不要だが、気軽に服用しないよう注意すべきである」と述べ、別の専門家は「睡眠薬を慢性的に使用するべきではない」と警告しています。
不眠症や睡眠障害で悩んでいる人は、ストレスも多く、自己努力だけでは回復が困難ですから、カウンセラーやカイロプラクティック医師などの専門家に相談することがお勧めです。