●2型糖尿病患者に対する強化血糖降下療法にリスク
英国医師会誌「BMJ」オンライン版に2011年7月27日に掲載された、Louis
Pradel病院臨床研究センターのDr. Catherine Cornuの研究で、「2型糖尿病患者に対する強化血糖降下療法は、心血管関連死亡リスクを減少させず、重度の低血糖リスクを2倍強に高める」と報告されています。
この研究では、医学データベースを用いて2型糖尿病患者に対する強化血糖降下療法の効果を標準療法と直接比較した無作為化比較試験を抽出。対象となった13件の試験、計3万4,533例(強化血糖降下療法群:1万8,315例、標準療法群:1万6,218例)についてメタ分析を実施。
その結果、「心血管死亡リスクや全死因死亡リスクは、強化血糖降下療法と標準療法間に有意な差は認められなかったが、強化血糖降下療法により重度の低血糖発生リスクが
2.33倍増大していた」ことが判明。
研究者らは、「2型糖尿病患者では心血管疾患リスクが増大するために、有益性が確認されていないにもかかわらず強化血糖降下療法が広く用いられている。強化血糖降下療法は慎重に注意深く行われる必要がある。治療の段階的拡大は制限されるべきである」と述べています。
●赤身加工肉の摂取が2型糖尿病リスクを増大
医学誌「American Journal of Clinical Nutrition」オンライン版に2011年8月10日に掲載された、ハーバード大学公衆衛生大学院栄養疫学のFrank
Hu教授の研究で、「赤身肉、特にホットドッグのような加工肉の摂取が2型糖尿病リスクを増大させる」と報告しています。
この研究では、米国で行われている大規模疫学研究のうち、男性医療関係者の健康状態について20年間追跡している「Health
Professionals Follow-Up Study」、女性看護師を28年間追跡している「Nurses'
Health Study I」、同14年間追跡している「Nurses'
Health Study II」からデータを抽出し、また糖尿病発症患者2万8,228人を含む計44万2,101人のデータも合わせて分析した。
生活習慣や食生活上のリスクファクター等を調整して分析した結果、1日あたり100gの未加工赤身肉の摂取は2型糖尿病の発症リスクを19%増加させるのに対し、加工赤身肉50g摂取は51%増加させることが判明。(加工赤身肉50gは、ホットドッグかソーセージ1本、又はベーコン2枚程度に相当)
また、赤身肉を毎日食べる人が、1食分を全穀粒に置き換えた場合は糖尿病リスクが23%低下し、ナッツでは21%、低脂肪乳製品では17%と糖尿病リスクが有意に低下することも判明。
Hu教授は「2型糖尿病リスクが赤身肉をより健康的な蛋白源と置き換えることで相殺できるというのは良い情報だ」と述べ、「現在、米国の各種栄養ガイドラインは、赤身肉を魚やナッツ、豆類、鶏肉などと同じ蛋白質群として扱っているが、赤身肉はその他の健康的な蛋白源とは区別するよう改訂すべきである」と指摘しています。
●糖尿病の蔓延は世界的に悪化の一途
国際糖尿病連合(IDF)は、ポルトガルのリスボンで開かれた欧州糖尿病研究協会(EASD)年次集会で、「糖尿病の蔓延は世界的に悪化の一途をたどっており、推定糖尿病患者数は3億3,600万人、糖尿病で毎年460万人が死亡し、年間の医療費は推定4,650億ドル(約35兆3,400万円)に達する」と報告しています。
IDFの Jean Claude Mbanya会長は、「これらの数字は、糖尿病が、もはや無視することのできない、世界が直面する大きな問題であることの証拠である。2011年には7秒に1人が糖尿病で死亡している」と述べています。
これらの新しい知見を参考に、糖尿病の予防と改善に役立てて下さい。