1.サプリメントで死亡リスク上昇
医学誌「Archives
of Internal Medicine」2011年10月10日号に掲載された、ミネソタ大学のJaakko
Mursu博士の研究で、「摂取しているサプリメントの成分によっては死亡リスクが高まる結果となっていることが判明した」と報告しています。
この研究は、アイオワ州の女性3万8千772名(平均年齢61.6歳)を対象に1986年から2008年までの長期間調査したデータを蒐集し、ビタミンやミネラルのサプリメントの摂取と死亡リスクの関係を分析しました。 1986年の調査開始時点で少なくとも1種類のサプリメントを毎日摂取していた女性は全体の62.7%、1997年では75.1%、2004年は85.1%と増加傾向にあり、2008年12月31日の時点で調査開始時の対象者全体の40.2%に当たる1万5千594人が死亡しました。
データを分析した結果、マルチビタミン、ビタミンB6、葉酸、鉄、マグネシウム、亜鉛、銅のサプリメント摂取は死亡リスクの増加との関連性が認められ、特に最も強く死亡リスクの増加との因果関係が高いものは鉄であることが判明しました。また、その他のほとんどのサプリメントは死亡リスクの増減に影響が無いことも判明しました。
Mursu博士は、「この研究の結果、一般的で広範なサプリメントを高齢の女性が摂取することを正当化できる科学的な根拠は殆ど得られなかった」と述べています。
2.前立腺癌のリスクがビタミンEサプリメントで増加
医学誌「Journal of the American Medical
Association」2011年10月12日号に掲載された、クリーブランド・クリニックのEric
A. Klein博士の研究で、「ビタミンEサプリメントを経口摂取している男性の前立腺がん発症リスクが増加していることが判明した」と報告されています。
この研究では、アメリカ、カナダ、プエルトリコで、PSA値が4.0ng/mL以下かつ直腸診でも前立腺癌の疑いがない壮年期(黒人は50歳以上、その他は55歳以上)の男性35,533人を対象に、ビタミンEとセレニウムのサプリメントの服用が前立腺癌発症リスクに影響しているかの調査を2001年から2004年にかけて開始し、被験者は4つのグループに分けられ、1群はビタミンE400IU、2群はセレニウム200mcg、3群はビタミンE400IUとセレニウム200mcgの併用、4群はプラセボ(偽薬)を調査期間中それぞれ毎日経口服用し、2011年7月まで大規模かつ長期的にデータを蒐集しました。
データを分析した結果、偽薬を服用していた被験者の前立腺がんの発症率を基準として比較した場合、ビタミンE服用の被験者は1.6人
/1000人/年の割合で発症リスクが増加、セレニウム服用の被験者は0.8人/1000人/年の割合で発症リスクが増加、ビタミンEとセレニウム併用の被験者では0.4人/1000人/年の割合で発症リスクが増加していることが判明しました。
Klein博士は、「ビタミンEやセレニウムのサプリメントには前立腺癌の予防効果が無い事が明白になっただけでなく、ビタミンEを継続的に服用すると前立腺癌の発症リスクが僅かだが逆に増加することが統計的に判明したので、欠乏症など必要な場合を除き服用は勧められない」と述べています。
これまでの研究でも、栄養補助食品(サプリメント)による効果がないばかりか、有害であるものもあると報告されていましたが、今回の2つの大規模で長期に亘る研究でも、サプリメントには長寿に関係はなく、予防効果もなく、逆に死亡リスクを高めるものや、癌のリスクを高めることがあることが判明しました。
特に、複数のビタミンが配合され、1錠で1日に必要なビタミンが総合的に摂取できるなどと謳っているマルチビタミンの摂取に死亡リスクの増加との関連性が認められたことは、多くのサプリメント利用者にとって重大な影響があるでしょう。
健康に良いと信じて呑んでいたサプリメントが、実は効果が無いものだった、逆に癌や死亡リスクを高めるものだった、という様な研究結果は利用者にとって受け入れ難いかも知れません。
しかし、サプリメント製造・販売業者の広告や情報よりも信頼性が高い疫学的研究によって判明した事実・現実を受け止めなければ健康を害することにもなってしまいますし、大切なお金を無駄に浪費することにもなってしまいます。
ビタミン・ミネラルを含め、栄養は自然の食物から摂取するように心掛けましょう。