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こちらアメリカでは、2月は『Black History Month』と呼ばれていて、アフリカ系の方達の文化や歴史を再認識しよう!という月に定められています。図書館や本屋さんでは、アフリカンアメリカン作家達の本が店頭にならび、またPBSなどのTV番組では黒人の歴史や偉大なるアフリカン系の指導者達の歴史ノンフィクションが放映されたりしますね。なぜ2月なのか?アメリカでの黒人の歴史に大きな影響を与えた偉大な歴史上の人物、2名の誕生日がある月なんです。奴隷制解放を大統領としてはじめて宣言したエイブラハム・リンカーン第16代大統領(1809年2月12日生まれ)や奴隷制度廃止運動家のフレドリック・ダグラス(1818年2月14日生まれ)という名前は読者のみなさまもご存知だと思いますが、いかがでしょうか?
もともとこのアメリカ新大陸にアフリカ系黒人の人達がはじめてやってきたのは1619年頃だと言われています。当時、ヨーロッパの国々で奴隷制度が盛んだったのですが、途中で食料が必要になったオランダ人の船がバージニア州などで黒人奴隷を置いていく変わりに、食料を積んで行った、という売買がなりたっていたそう。これが発端となり、新大陸アメリカにも奴隷制度が始まったという訳ですね。
リンカーン大統領はこの奴隷制を廃止する方針をだし、それがあの南北戦争発端となります。1866年に晴れて奴隷制廃止となったものの、その当時まで存在した黒人への偏見や差別が急になくなるわけではなく、アフリカン・アメリカンの人達の生活は良くなるどころか、ここからが本当の意味で「人権平等への戦い」だったようです。人種差別や異文化への理解、という問題はいつになっても簡単になくなるものではない、というのが悲しい事実なのでしょうか。
そんな状況に遂に耐えきれなくなったアフリカン・アメリカン達が公民権運動(Civil
Rights Movement)を大々的に起こしたのが1950〜1960年代。考えてみたらんほんの半世紀ほど前なのです。例えば、1955年にアラバマ州モントゴメリーでの事件。仕事帰りで疲れ切っていた黒人女性ローザ・パークスが、バスで白人に席を譲らなかったために逮捕される事件がありました。これが発端で、黒人たちの“バス・ボイコット”運動が起こりました。同じ年には黒人客に食事を出さないドラッグストア、ウールワースのランチ・カウンターで、黒人たちが“シット・イン”(座り込み)を始めました。ノース・カロライナ州グリーンズボロから始まったこの運動は全国に広がっていったと言われています。
1961年になると、差別撤廃を訴える黒人と白人のグループがバスに乗ってワシントンD.C.から南部に向かう“フリーダム・ライド”が始まります。そのために利用されていたバスが爆破されるなどの攻撃を受け、負傷者が続出。このような動きの中、ミシシッピ大学に初めての黒人学生ジェームズ・メレディスが入学したのが1962年。白人社会の中にはこのような「平等」に快く思えない人もいたようで、このことから有名な暴動“ミシシッピ・ライオット”が起こり、死亡者と多数の負傷者がでました。1963年には、黒人解放運動の歴史上でとても重要な事件が起こります。公民権運動に賛同する250,000人がワシントンD.Cに向けて行進、指導者であったキング牧師は有名な「私には夢がある」のスピーチを行いました。
この”マーティン・ルーサー・キング・Jr.牧師”、プロテスタント系の牧師であった彼は、アフリカ系アメリカ人の公民権運動の指導者としてたくさんの人々に影響をあたえました。インドのガンジー氏の教えに啓蒙し、”非暴力主義”にのっとって人種平等を指導、8月28日に行われたリンカーン記念堂前の演説では「I
have a Dream」ではじまる人種差別敗北への希望を
分かりやすく説明し、たくさんの人々からの共感を得ました。この地道かつ力強い運動のおかげで、アメリカ国内での世論が盛り上がって行き、1964年には7月2日に公民権法
(Civil Rights Act)がジョンソン大統領のもとで制定されるに至るわけです。また、これらの功績が世界中で認められたキング牧師には、ノーベル平和賞が受賞されました。
しかし、この後もアラバマ州の黒人教会が爆破され4人の少女が亡くなったり、ミシシッピ州で3人の公民権運動家が殺害されたり(この事件を元にした映画が1988年の「ミシシッピー・バーニング」)また、1965年にはマルコムXが暗殺される、また3年後の68年にはキング牧師が暗殺されるという、非常に手厳しい歴史の数々があげられるのです。これだけ読んでも、かなり重い内容ですが、実はニュースならなかった、そして他の人達に伝えられていないような、人種差別関連の事件は数々あると言っても過言ではないでしょう。
さて、今月のホクホク最後に、ある賛美歌の歌詞をご紹介させていただきましょう。これはWe
Shall Overcomeというタイトルで、西洋ではとてもメジャーな賛美歌の1つです。日本語では「勝利をのぞみて」という訳になっていますが、1964年のワシントン大行進ではこの賛美歌を賛同者みなで歌いながらマーチングして行きました。キング牧師はこの歌を暗殺される前日まで口ずさみながら、皆を、そして自分自身を勇気づけていたと言われています。みなさんにもぜひ知っていただきたい歌詞です。
We shall overcome |
We shall
overcome 私たちは打ち勝つ
We shall overcome 私たちは打ち勝つ
We shall overcome some day いつの日か、私たちは打ち勝つ
CHORUS(繰り返し)
Oh, deep in my heart 心の奥にひびく
I do believe そして強く信じる
We shall overcome some day いつの日か、私たちは打ち勝つ |
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