あっという間に夏も終わり、この間までは緑の葉っぱだった森林も、気がつけば赤や黄色の色に変わっていてびっくりしました。短い秋の季節ですが色鮮やかな紅葉を満喫し、ハロウィーンを迎えるのも悪くはないですね…
今月の“アサコ先生にちょっと聞いてみよう!”のコーナーでは毎月読者の方々からたくさんのご質問を受ける中、「この時期になると欝っぽくなるんです…」というトピックを取り上げてみました。
読者Aさんからの質問: アメリカ・シカゴ生活が18年が経ちました。10年程前から秋になると欝っぽくなる傾向にあります。春や夏の間は欝の症状は殆どと言っていい程ないのですが、急に寒くなり、今まで夜8時まで明るかったのが、6時には暗くなっていく事にもなかなか慣れず、毎年起こる事なのにいつも秋口になると気持ちがどんよりとしてきて、やる気が無くなったり、集中力もなく、食欲が増し、いつもよりも長く寝ることが多く、そしてイライラしたりします。この状態が冬の間も続くのですが、秋の時と比べると症状はより一層輪をかけた様にひどく感じます。症状が酷過ぎて、仕事にも行けないぐらい朝も辛く、起きることが出来ない事もありました。春になると気持ちは少しづつ良くなり、暖かくなるにつれて欝っぽい症状も和らいでいき、夏になると全く欝っぽい事は一切ないのです。この寒くなる季節がシカゴにも訪れてしまい、また欝っぽくなる冬を過ごすのかな?と思うと気持ちが重いです。
Aさん自身、10年程前から欝っぽいと言う事に気づき、それなりに自分でも症状などを理解して認識している事がまず素晴らしいなと思いました。なかなか自分の欝の症状を理解できずに苦しんでいる人が沢山います。
Aさんの様に季節の変わり目に、気分になんらかの影響があり、気分がどんよりしてしまう事を「季節性感情障害」又は「反復性冬季欝病」といいます。秋ころから冬にかけて気持ちが憂鬱になり、どんよりし落ち込みが激しくなり欝の症状を伴うのですが、夏に欝の症状を経験する人もいるようです。この障害は欝病の一種で、季節性ではない欝病の症状を伴います。症状を幾つか上げてみると、Aさんが経験している症状の様にイライラ感、やる気が減る、集中力の低下、性欲低下、人と会いたくない、体がかったるくなる、食欲増、睡眠時間がとても長くなったりすると言われています。食欲が増え、睡眠時間がとても長くなるというのは、この季節性感情障害の特徴だとも言われています。そして、パスタ、パン、ごはん、甘いものなど炭水化物をいつも以上に欲しがる傾向にあり、食欲が増え、体重も春・夏に比べて増えてしまうようです。この様な症状が日常生活になんらかの影響を与えているようであれば、この障害に悩まされているかもしれません。
男性と女性を比べた時に女性の方がこの障害になりやすいと言われています。そして赤道から離れている場所に住んでいる人の方が赤道に近い場所に住んでいる人と比べてこの障害になりやすいようです。
ではAさんの様になぜこの様な症状を経験するのでしょうか?この季節性感情障害の原因は日照時間不足の為だと言われています。冬は日が照っている時間は夏と比べるととても短いです。特にシカゴなどは冬の間は晴れている日が余り無いわけです。光を浴びる時間が少ないと、脳内のセロトニンというホルモンの分泌が低下してしまいます。セロトニンは気分を良くしてくれたり、精神安定のホルモンです(幸せホルモンとも呼ばれています)。このホルモンが低下するとうつ病になりやすくなると言われているわけです。
ではどうしたらこの症状を軽減できるのでしょうか?改善法は幾つかあります。まずは、直射日光になるべく当たる事です。とくに冬は家の中などにこもってしまいがちになりますが、一日、10分でもいいので外にでて直射日光にあたってセロトニンの分泌を増加させましょう。もし、シカゴの様に冬は外にでて直射日光に当たれない場合は、ライトボックスという人口の光を使用して光療法を受けるのもいいでしょう。朝の時間に一日30分から1時間程光にあたると効果がでると言われています。逆に夜にライトボックス治療をするのは避けた方が良いといわれていて、その理由として夜、寝つけることができないからという事です。このライトボックスの光は紫外線ではない為、目や肌には害がありません。そして次に普段から運動をする様に心がけ、秋になっても運動を続けて体を動かして脳のホルモンのバランスをよくする事も大切と成ります。他には抗欝剤のお薬を投与する事も大事です。お薬を飲む事により、脳ホルモンの分泌が増加して脳内のホルモンバランス改善となりうつ症状の低下に繋がります。お薬を飲んでいる人は春になるとお薬をやめる人が多い様です。そしてその他にカウンセリングで認知行動療法を取り入れ、物事に対しての受け取り方や考え方を認知しながら気持ちを楽にしていくようにバランスを取り、ストレスと上手く向き合える力を蓄えるスキルを身につける方法です。
この様な様々な改善法がある事を知らず、Aさんの様に10年もこの障害に苦しんでいる人も沢山いると思います。この季節性感情障害を理解し、自分の出来る事をしながら改善できる事がわかれば、気持ちの持ちようが今後は違うのではないかと思います。
これからもどんどんとご質問・ご希望などをお気軽にお寄せください。